【うすくちエッセイ】

「いつか、イカ釣り漁船へ(本物のグルメとは)」

 「イカ釣り漁船に乗って、トレトレのイカそうめんを食べてみた〜い!」
これが今の私の憧れだ。
もちろん「漁師になろう!」なんて大それた夢ではない。
漁師さんにお願いして船に乗せていただき、水揚げされたばかりのイカをひっつかんで、
船底に置いたまな板の上で細切りにしてドンブリ鉢に入れ、サッと醤油をまわしかけて、
ツルツルッと頂く! ん〜、憧れるなぁ。
イカを育てた海を訪れ、イカ釣り漁とともに生きる漁師さんの姿に触れ、
その土地、その場でしか味わえないような料理を体験する。
これこそグルメだ! と、私は思うのだ。

 縁あって、時々「グルメライター」なんていう肩書きの付く仕事をさせて頂いている。
ちまたでウワサのおいしい店、本場で修業した有名シェフのお話、高価な食材のこと・・・.。
とても面白い。
でも「グルメって何?」と聞かれれば、ウ〜ン…と唸ってしまう。
「自分はグルメだ!」とか、「食通だ!」とか自慢げに主張する人がたまにいるが、自信満々な人ほど「自分では料理はしない!」なんて発言を平気でする。
 世間でいう、いわゆる「グルメ、食通」のイメージって、「各地の高級料亭に通い慣れている」とか、「いかに多くの飲食店を知っているか」とか、「いかに高級食材を食したことがあるか」とか、なんだかバブリーな感覚がつきまとっているのではないだろうか?
それはそれで、「知識の豊富さ」という意味では価値あることに違いない。
でも私は、料理をしない人は「グルメ」とは呼びたくない。
本当に「食」にこだわるのなら、まず野菜を育て、狩猟に出かけてタンパク源を手に入れ、海へ出て新鮮な魚介を仕入れて、それらの味を最大限に引き出す料理法でごちそうをこしらえて晩餐会!! …とまあ、これぐらいはやっていただきたいものだ。
 しかしながら、これはあまりに難しい。
だからせめて、自分が出来る範囲のことはやりたいではないか。
つまり、新鮮な素材が手に入る土地まで足を運ぶとか、たとえスーパーでも自分の目でいいものを選ぶとか、それをどう料理するか日夜研究に励むとか…。
「おいしいお店へ食べに行く」ということは、それらをすべて専門家にやってもらっているということなのである。大事な部分を全くの人任せにしてしまっているのだ!
ここんとこ、もっと自覚すべきではないのかぁっ!(誰に言ってるのだ??)
 もちろん、これも線引きの問題で、どこまで自分でやれば「こだわり」と言える…などという基準はないし、人それぞれの考え方に過ぎない。だからべつに、食べに行くことが悪いとはまったく思わない。
ただ、「いいお店に通うこと=グルメ・食通」と勝手に思いこみ、実際は人にやってもらっていることをすっかり忘れて自慢げに「自分はグルメだ〜」と言うのは、それは勘違いというものだ。問題は、そこに探求心や研究心があるかどうかではないだろうか。
 …などとエラソーに言っている私も、正直なところぜんぜん実践できていないのが現状。
当然、「グルメ」などとはほど遠い。
やっぱり、一刻も早く自分の足でイカ釣り漁船に乗りに出掛け、トレトレのイカそうめんを食べなければっ!
だから、だから…!!
どなたか漁師さん、私の願いを叶えて下さいませ〜!! って、これじゃあ人任せか…。

                                            (’99年3月)

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