【うすくちエッセイ】


「ミニチュア制作に至るまでのいきさつ」

〜ミニチュアが好きな理由〜

 ちっちゃなものを無条件に「可愛い!!」と感じるのは、これはもう母性本能によるものなのでどうしようもない。
記憶にないほど幼い頃の私は、小さな小さなクモを見つけては、キャッキャとはしゃいで追いかけ回していたのだと両親は言う。
「この世で一番キライな生き物」がクモである現在の私には、ソレが同一人物とはとても思えないのだが、
とにかく、“ちっちゃなもの好き”はエスカレートし続け、今に至った。
従って、「いつから好きになった?」と聞かれても、「生まれつき」としか答えようがない。

 何気ない普段の生活でも、様々なシチュエーションの中でミニチュアに出会う。
たまたま通りがかった店で見つけたり、レストランのウインドウに飾られていたり、ポストカードの写真になっていたり…。
そんな時、私はその場に釘付けになる。
吸い込まれるように、見入ってしまう。
博物館によくある、昔の町並みを再現した模型など、隅から隅まで眺めないと気が済まない。
納得いくまでじっくり眺め回すと、そのあと、得も言われぬ幸福感に包まれる。
だから、高校生の時、村上一昭さんの『ドールハウスづくりABC』という本に出会った時の嬉しさは、今でも忘れることが出来ない。
本を買って帰った私は、やはり隅から隅まで吸い込まれるように見入った。
そして、「いつか私もドールハウスを作ろう」と胸をときめかせたのだ。

〜制作に取りかかるまで〜

 しかし、実際にミニチュアやドールハウスを作り始めたのは、つい最近だ。
ナゼに今まで取り組もうとしなかったのかというと、「ドールハウス作りは老後の趣味にしよう」と心に決めていたから。
これにはワケがある。
私はまだ弱輩者なので老いが怖い。
よって、老後に向けて「スバラシイ目標」を今から掲げておけば、生きてゆく支えになるかと考えたのだ。
私にとってドールハウスは、生きてゆくための最終目標にもなりうるものなのである。
でも最近、老後にもしチュウブにでもなって手が震えてきたら…、視力が落ちてしまったら…、などと様々な不安が頭をかすめ、ついつい、やり始めてしまった。

 やるとなったら、本気でやる!
…というより、本当はやりたくて仕方なかったのだ。
でも実際、ドールハウスの制作となると、多大な時間と労力と気力と費用を要する。
気力はあるものの、時間や費用を確保するのはムリ…と今までは考えていたのだが、
すでに“やりたい気持ち”の方が私の中で飽和状態になっていた。
“時間”はムリヤリ作ればいい。
“費用”はないが、なければないでやり方を考えればいい。
こうして、私のミニチュア作りが始まった。

〜必死!…でも幸せな現状〜

 さーて、やるとなればさっそく、部屋の配置換えからだ。
机の上にはまず、筆と筆洗、パレット、ヤスリにカッターナイフにヘラに木工用ボンドにラップを装備。
イスの横にはアクリル絵の具、あらゆる太さのヒノキ棒、プラ板、ワイヤー、そしていろんな粘土。
仕事に使う道具はそっちのけ、原稿執筆のためのノートや資料、パソコンのキーボードも隅っこへ追いやり、
ヨシ、作るゾ〜ッ!と、気合い十分な私。
これが、今年6月だ。

 作品をつくり始めると、私にもこんなに集中力が備わっていたのか、と気付く。
とにかく必死に作業をしていると、アッというまに何時間も過ぎてしまう。
誰かに習ったりしたことがまったくないので、すべて自己流。
おまけに、何でも勝手にアレンジしてしまうクセがあるため、お手本通りにやったことがない。
おかげで試行錯誤の繰り返しばかり。
まだ仲間もないし、なんにもない。
ミニチュア制作が何かの形となって表れる見通しも、全くない。
でもとにかく楽しい。
作ることが楽しくて仕方ない。
そして、漠然とはしているものの、夢がある。
ここから何かを広げたいという夢。
今はそんな願いを心に忍ばせながら、
ミニチュア作りに無我夢中の幸せな毎日を送っている。

                                  (’98年12月)

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