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【4】 2001年 7月17日〜9月7日
酒の話・チーズの話
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常時更新、連続エッセイ
人生、食べるが勝ち!
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2001年 7月17日
東広島市の西条は、酒どころとして名を知られる町。
訪ね歩いた5軒の酒蔵の人々は、とにかく物静かで親切ないい人ばかりだった。
「水の郷100選」にも選ばれた水は柔らかく、人も柔らかくて、日本酒も柔らかい。
おかげで、いつまでも心に留まるお気に入りの味に出合えた。
柔らかい味わいの日本酒が好きなのだ。
酒というのは、自分の人生の中で「その時期の流行り」というのがある。
皆さんにもきっとあるのではないだろうか?
私はそもそも、酒類は日本酒から入った。
かなり幼い頃の話だが、父の晩酌の時に杯一杯もらう酒がとても楽しみだった。
いろんな人に聞くと、「子供の頃にビールの泡だけ飲んだ」というのがスタート、
という人が多いようだ。
しかしビールの泡はよくても、黄色部分(?)そのものは、
その「苦味」がイヤだという。
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2001年 7月18日
私の場合、ビールの「苦味」は嫌いではなかった。
しかしながら、麦のあの「モゥワァァ〜」とした独特の香りにどうも馴染めなかった。
あれは小学生ぐらいの時だろうか。
ビール工場の見学に行った時、工場中にその香りが充満していて参った。
ホップの発酵する時の匂いというのか、
あれって頭ン中すべてを占領されるような感覚にならない?
ハンカチを鼻に当てて息しながら、やっとの思いで見学した。
「やっぱり酒は日本酒やな〜」とか何とか言いながら(わかってんのかい?)、
その日の夕食時にはまた、父の徳利からぬる燗をお裾分けしてもらったものだ。
中学生の時、私の中での流行りは日本酒から洋酒に移行した。
その頃、世間では「ハイボール」なるものが流行っていたのだ。
んん〜、なんとも懐かしい響き。
いわゆる、ウイスキーの炭酸割りである。
我が家でも例に漏れずハイボールが流行り、
夜になるといそいそとウイスキー、氷、炭酸水、マドラーなんかを用意して、
カラコロとグラスを回しながら楽しんでいた。
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2001年 7月19日
ハイボールって言葉さえ、もう滅多に聞かなくなった気がするが、
いったいどうなったのだろう?
だいたい、どっから来た名前なんだろうか??
ハイボール→高い球?……ンなわけないか。
中学生の頃の私は、
自分が中学生という中途半端なポジションにいることがイヤでたまらなくて、
毎日クサクサしていた。
それでも自分としては、まあ言えば「普通の良い子」タイプと心得ていたので、
学校にも毎日きちんと出席していたわけだが、
このクサクサ気分には洋酒がもってこいなのである。
アルコール度数の出来るだけ高いブランデーを選んで、
ストレートのまま口に含むと、
唇から舌、歯茎まで、口中の隅々からキュウーーーーッと音を立てて、
アルコールが体内へと吸収されてゆく。
この感覚がもう、たまらんのだ。(アル中ちゃうんソレ?)
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2001年 7月20日
ということで、私の中学生時代の流行りは、
ウイスキーかブランデーを、ストレート又はハイボールで飲むことだった。
高校時代には、我が家にワインブームがやって来た。
時代はやっと、ワインセラー付きのお酒屋さんが登場したっていう頃である。
(私の年齢バレバレ?)
その頃の私にとって、ワインセラーでワインを選ぶというのは、
ある種の優越感さえ味わえるような優雅で贅沢な行為だった。
初めてワインセラーの中へ入った時のドキドキ感を、
今でも覚えているくらいなんだから。
しかし実際に買うのは、ワインセラーの入り口前に積んであるお手軽ワインなのだが。
今ほど安いものはまだなかったが、1000〜2000円ぐらいのものをよく買った。
とくに気に入ってたのが、ドイツのリープフラウミルヒの白……いわゆる
甘めでぶどうらしい味わいが生き、口当たりがとても良いという、
ワイン入門編みたいなタイプだ。
だが、好みというものは本当にどんどん変化するものである。
(※注:上記はフィクションです。)
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2001年 7月22日
あのトロリとするほどの濃厚な白ワイン、ほんとに魅力的だ。
しかしどちらかというと、このタイプはデザートワインっぽい。
しょっちゅう飲んでいると、もうちょっとスッキリしたものが欲しくなるのも自然の流れ。
辛口の白ワインならかなりスッキリ派だけれども、
私は基本的に「濃厚好き」なもんで、ちょっと頼りない気がする。
ということで、赤ワインにハマリ出した。
赤ワイン独特の、あの
「巨峰を皮ごと口に放り込んで、キュッキュッと噛んでいるうちに染み出る渋味」
という感じのコク。これはクセになる。
これがクセになり始めると、だんだん渋味への欲求がエスカレートする。
そこで“樽の香り”を求めるようになるのだ。
いいウイスキーを飲んだときの、あの森林の中に佇んでいる気分にさせてくれる木の香りに似て、
熟成の進んだ赤ワインの樽の匂いというのは、なにか本能に訴えかけるものがある。
やっぱり人間、山林の中を駆け回っていた過去の記憶が、かすかに残っているのかなぁ。
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2001年 7月23日
高校時代はワインで過ぎ、大学に入学してからビールを飲み出した。
(※注:上記はフィクションです。)
それまでは先述のごとく、ビールの麦の匂いにイマイチ馴染めなかったのだが、
飲み慣れると、その麦の匂いがけっこう良くなってくるから不思議。
しかし、宴会で飲むビールというのは、すぐに誰かがつぎ足してくれるからイカン。
せっかくよ〜く冷やしたビールを用意してもらっても、
コップの中ですっかり泡が消え、ちょっとぬるくなったビールの上からドポドポと足してしまうと、
ホンマにまずくなる。
皆さん、ビールは自酌で飲みましょうよねっ!
つぎ合いっこなんて、するもんじゃぁありません!
ビール自酌推進委員会でも発足しようかしら。
しかしコレ、なかなかそういうワケにもいかんのやなぁ……。困ったもんだ。
なぜなら、宴会のビールというのは、単なるコミュニケーションのアイテムにすぎない場合が多いから。
そこに「ビールを味わう」という目的は、ほぼ含まれていない。
あ、誤解なきよういちおう断っておくが、
私はヒジョーに酒に弱いのだ。
ワインなんて、グラスに一杯で寝てしまう。
ビールも、コップ3杯も飲めばフラフラだ。かわいいもんやろ〜!(?)
特に最近、年のせいかいっそう弱くなってしまった。
だからこそ、その一杯、そのひと口をいかに美味しく飲むかが大事なのである。
“酒に弱い酒好き”にとって、宴会ほどもったいないアルコール摂取法はないのだ。
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2001年 7月24日
忍者になってきた。ぜーーーんぜん関係ないけど。
昨日、忍術村で忍者修行してきた。
ちゃんと忍者の装束を身につけて、背には刀を背負って(メチャ重い!)、
忍術の訓練を受けてきたのである。
想像を超える暑さの中、石垣登りや井戸抜け、水グモなど、
ほとんど筋トレ状態。干物になりそうだったぞ。
しかし、楽しかった。ちなみに、これもお仕事。
帰りには認定書も授与されたので、これからは忍びとして生きようと思う。
忍びなのに発表してどうする。
(ひとつもやっていない同行者も認定書を受け取っていた。なぜだ?)
関係ないハナシは置いといて、酒の話に戻ろう。
私は思う。酒の味は、出来るだけ早くから覚えておくほうがよい。
法律は、私は“基本的”に守ろうと思ってはいるが、
二十歳まで一滴も酒を口にしないのは、ちょっと問題があるように思う。
なぜなら、酒というのは命にもかかわるものだからだ。
酒についての知識、特に危険については、
子供の時からしっかり教えておくべきだと思うのだ。
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2001年 7月29日
ちょっと取材旅行に行ったりしていたので、更新できませんでした。
失礼しましたぁ!
おわびのしるしに、道中のスナップ写真でもいかが?
京都府の最北の町、丹後町の碇高原牧場にて。
↓ドアップ!!↓
口もとがいいネ!金網が邪魔ですな。
さて酒バナシの続き。
法律では二十歳まで酒を飲んではイケナイとなっている。
がしかし、それを厳密に守るべきかどうかと言えば、
私の意見としては「守るべきでない」である。
なぜなら、たいていの人は二十歳までに、酒を飲む機会に出合ってしまうからだ。
私の高校時代でもそうだったが、学園祭の打ち上げは「居酒屋集合」だった。
私は停学になりたくなかったので、欠席したのだが。
高校生ぐらいってちょうど、何かと酒を飲みたがる時期なのだ。
当時の友人で、今まで一度も酒を飲んだことがない、という女の子がいた。
彼女は先輩に勧められるまま、コーラを飲んだ。
その直後、彼女の全身をヒドイじんましんが襲ったのである。
彼女はアルコールアレルギーだったようだ。
そのコーラには焼酎が入っていて、先輩とやらは面白半分に彼女に飲ませたワケだが、
彼女はそれにアルコールが入っていることに全く気付かず、グビグビと飲んだそうである。
じんましんだけで済んだからまだ良かったものの、
これが急性アルコール中毒になっていたら、取り返しのつかないことになるのだ。
まったく、飲ませた者の軽率さにあきれる。
しかし、彼女もアルコールの味に気付けば、自分の身を守れたはずである。
酒を飲んだ経験があれば、焼酎の味に気付かないなんてことは考えられない。
それに、アルコールに対する自分のアレルギー体質を知っていれば、
もう少し適切な対処が出来たに違いない。
だまされて飲まされた彼女に責任はないとはいえ、
危険な目に遭うのは結局、彼女自身なのである。
春になると思うのだ。
この時期、いつも流れるニュース。
大学のサークルの新入生歓迎コンパで、毎年毎年、何人かの死者が出ている。
有無を言わせず、無理矢理に飲ませる奴ら、(殺人行為である)
ただただ嬉しがり、調子に乗ってバカ飲みする奴ら。
おまけに、そのまま夜の冷たい海に飛び込む奴らまでいる。
いずれにしても、酒に対する無知こそが原因ではなかろうか。
やっと大学に入学したのに、こんなことで命を落としてしまった若者の無念さ、
そして、その両親の悲しみを考えると、私はなんともやりきれない気持ちになる。
こういうことは、酒を飲む機会が訪れる前に、
もっとちゃんと学習しておくべきではないだろうか。
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2001年 7月30日
ちょいとマジメに訴えてしまったが、
危険が伴うものほど学習が必要だということを、
もうちょっとよく考えてもいいのではないか、と思う。
そういうたぐいのものって、他にもいろいろあるやんね。
そんなこと言いつつも、ま、私の場合、
酒の味を覚える必要性を感じて飲んでいたワケではない。
ぜーんぜん、ない。
親の監督の下だから、ほんとに微量しか飲んでいないし、
とにかく「おいしい!」と思ったから、飲んでいたのだ。
だが、そのおかげ(?)で、二十歳ぐらいになった時、
世間の公認の中で飲めるという立場を、嬉しがって、はしゃぐようなことはなかった。
私にとって「酒」は、
普通の食べ物や飲み物と同じく、ごく自然に味を楽しむものである。
人間、なんだってそうだ。
「ダメ、ダメ」と言われりゃ、反発心がわき起こる。
そんな中で、ある時、タガがプチンと切れてしまえば、冷静でいられるハズもない。
しかし「どうぞ」と言われりゃ、自分自身で吟味するようになるのだ。
たぶん誰も、そんなもんだと思う。
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2001年 7月31日
何年か前の話だが、
大学時代からの親しい友人が、私の誕生日祝いにと、
わざわざ宅配便でプレゼントを送ってくれた。
開けてみると、「骨酒セット」。
おおー!し、しぶいっ!!
こんなものがあるんやなぁ。
商品内容をご紹介すると、
“青竹”の中に“いわなのパック”が入っているのである。
それも、いわなは真空パックになっているので、かなり日持ちする。
いそいそと説明書を読み、さっそくやってみた。
まず、真空パックのいわなを軽く焙る。
それを青竹に入れて、用意しておいた燗酒を注ぎ、しばらく待てば出来上がり。
う〜むむ、なかなかオツなもんだなぁ〜こりゃこりゃ。
いわなの香ばしさが酒に溶け込み、しっかり味がついたような感じだ。
そこへ、青竹のさわやかな香りが加わると、魚っぽさをサラリと軽やかにしてくれる。
日本酒はおそらく、「辛口ながら味わいは濃厚」なタイプが似合うだろう。
ああ、日本の味だなぁ〜。うまいっ!
しかし、友人が私のために選んでくれた品が、
なんで骨酒だったんだろう??
そんなに私って酒好きっぽかった???
ウフフ、よくわかってらっしゃるわ。
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2001年 8月2日
ついに8月になりましたねー!
あまりに暑いので、もうとっくに真夏気分でいたから、
「えっ?まだ8月って来てなかったん??」って感じである。
夏と言えば、世間ではやっぱりビール!なのだろうか。
ビアガーデンは相変わらず流行っているようだが、
あれも時代のモンって感がある。
昔は「外は涼しいもの」だったから、
夏の夜に野外で「涼みながら」ビールを飲むのは気分良かっただろう。
しかし、今はどうだ。
外へ出て「涼める」か? いやいや、涼めるなんてとんでもない。
野外に出れば、ムシムシ〜むあぁ〜〜っと温い空気が溜まっている。
風も、かけ抜けることなどない。
わざわざそんなところでビール飲まんでも……と、普通は思う。
だが考えてみれば、空調でよく冷えた快適空間で冷えたビールを飲むより、
ぬる〜い不快な場所でキリッと冷えたビールを飲む方が、
ビールの美味さは引き立つってもんだ。
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2001年 8月3日
昨日、夕食の準備をしようと、イカをさばいていた。
するめイカを5本ほど。
足を持って、お腹の中から内臓を調子よくズルリと抜いていた。
すると、で、出たあぁぁぁぁーーーーっ!!
何が出たと思います?
なんと!!
「トンボ」が出たのだ。
あの、昆虫のトンボである。
イカってけっこう、雑食なのね。
さて、今、「へぇ〜、イカって空飛ぶんだぁ……」
……と思ったアナタ!
童話を書いてみましょう。
向いていると思います。
あんまりビックリしたので、ここに書いてみたが、
もしかしてけっこう普通のことだったりして?
ビールの話は、また明日。
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2001年 8月4日
ビアガーデンなる処に初めて行ったのは、もう十数年も前のことになる。
(歳を計算しないでね!)
それが、今になって思えば、あーゆーのは珍しい気がする。
それは旅行先でのこと。とある大型スーパーの屋上だった。
それだけでも、珍しくない?
(最近はどうも、屋上のビアガーデンってホテルぐらいしかやってない気がするんだけど、
京都だけかな…。)
そこはエラク気軽なスタイルで、
何百円のビール一杯だけでも、何時間でも座っていられるところだった。
(最近は何千円で飲み放題、食べ放題が多くない?)
のんびり飲んでいると、おもむろに蝶ネクタイの男性が現れ、
簡易特設ステージみたいなことろに立って、喋り始めたのだ。
「ではただ今から、カラオケ大会を始めたいと思いま〜っす!」
……と、突然「カラオケのど自慢大会」が開会されたのである。。
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2001年 8月5日
「さあ! 皆さんどんどん唄ってくださーい。
唄ってくれた人には、このポップコーンをプレゼント!」
え?
ポップコーンくれるの?
普通、カラオケっていうと、お金を払って唄うのが一般的だと思うのだが、
ここはどうやら、唄ったらご褒美がいただけるようである。
すると、隣りのテーブルの、会社帰りの男女グループがにわかに騒ぎだし、
「行け! 行け!」という声に押されて、女性が一人、ステージに登った。
そして、♪タリラリラ〜ン……と鼻歌のような歌を唄ったその女性は、
しっかりポップコーンの大袋を抱えて、テーブルに戻ってきた。
そのテーブルでは、さっそくその大袋が広げられ、ビールのアテとなった。
このビアガーデン、こんなことで商売になるのだろうか??
アテまでタダで提供してさ。
そうでなくとも、お客さん、わずかな人数しか来てないというのに……。
「さぁて、次の方はどなたぁ!?」
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2001年 8月6日
司会の兄ちゃんも、閑散としたこの会場を前に、もう必死だ。
たぶん、むりやり担当さされて、内心イヤなんだろうなぁ。
するとまた、隣りのテーブルがワヤワヤ言い出した。
「オマエ、上手いやん! もう一曲唄って来いや〜!」
「そうや、もっと唄って〜! 行け行け〜」
言われた当の女性も調子のいい人らしく、
また本当にステージへ走って行ったのだ。
♪タリラリラ〜ン……。
そして隣のテーブルには、またもやポップコーンの大袋が追加されたのである。
なんだか、妙に珍しいビアガーデンでしょ?
しかし、この女性がステージで唄っている間のことを、
私は未だに忘れることが出来ない。
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2001年 8月7日
隣りのテーブルの、彼女と同僚らしき面々の会話である。
「アイツ、ほんまに行きよったでぇ。アホちゃう」
「へったクソなくせに、よう唄うな〜」
……もっともっとあったと思う。
もう、彼女をこき下ろすのなんのって、さんざんなのだ。
で、また彼女が席に戻ってくるやいなや、
「イエ〜イ!! 最高やん。上手いなー!もう一回唄ってぇー」
ってな調子なのである。
はあぁ〜、人間ってコワイ。
そりゃもしかしたら、彼女はよっぽどの嫌われ者だったとか、
なんか裏事情があるのかも知れんが、
とにかく、この裏表にはマイッタ!
私はまだ、中学生だったんだから。
(私がビールを飲んだ、とは書いてないからね。)
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2001年 8月9日
酒に合うアテといえば、チーズ。
最近、チーズにちょっと凝っている。
昔から私は、チーズが大好きだった。
小学生の頃、給食でチーズがつくと、
友達がわざわざクラスメイトから集めてきてくれたものだ。
「ハイ、チーズ好きなんやろ。こんだけ集まったで!」
一番多い時は、11個もあった。
もちろん、いっぺんには食べられずに、半分ほどは家に持ち帰ったが。
みんな、「チーズなんか嫌いだからあげる!」ってなものだった。
その頃は、今のように輸入チーズがたくさん販売されている時代ではなく、
普段口にするのは、いわゆるごく一般的なプロセスチーズばっかりである。
そんな日本の現状を見たヨーロッパの人々は、当時
「日本人は本当のチーズの味を知らず、かわいそう」と言っていたそうだ。
こんなモノをたべてりゃぁ、嫌いにもなるハズ……なんだそうな。
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2001年 8月10日
最近になって、その言葉に納得できるようになった。
普段から、ブルーチーズやカマンベールチーズなどを食べている人からすれば、
かつての日本で一般的だったプロセスチーズは、そりゃぁコクがないってもんだ。
後を引くような、あの“いかにも乳製品らしい”まろやかさとか、
舌にほんのわずかに「ピリッ」とくる、カビの刺激とか、
いわゆる、発酵食品の独特な味わいが、ない。
味が薄い、と言っても過言ではないだろう。
べつに、あのプロセスチーズがマズイとか、悪いとかいうのではなく、
“頼りない”のである。
ヨーロッパ人に言わせれば、「旨味が抜けてる」という感じなのだろう。
そりゃそうだろうな、かつての日本の状況じゃぁ……。
それを思えば、最近はホントにさまざまなチーズが輸入されるようになったものだ。
百貨店の食品売り場に行けば、必ずチーズコーナーが設けられ、
チーズアドバイザーみたいな人が付いてたりする。
この職業、ちょっと前まではほぼ採用もなかったろうが、
この頃はきっと、けっこうポピュラーな専門職なんじゃないかな。
ソムリエみたいに。
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2001年 8月12日
しかし、カビ系チーズを初めて食べる時って、けっこう勇気がいるもんだ。
最初にブルーチーズなんぞを食べてみた人は、
納豆を初めて食べた義家とやらと同じぐらい、エライ!
あの見た目は、まさに青カビの巣……普通は口に入れへんやろ!?
そのうえ、カビってピリピリするから、身の危険を感じはしまいか?
私が初めて本格的に食べたカビ系チーズは、
神戸六甲牧場のカマンベールチーズだったが、
ピリッとくる刺激に戸惑い、美味しいとか思う余裕などなかった。
その日は暑く、牧場で購入してからホテルまで持ち歩いたので、
腐ってしまったんじゃないかと思ったものだ。
その後、カマンベールはなんとか食べるようになったのだが、
ブルーチーズはなかなか馴染めなかった。
そんなある日、決定的にブルーチーズを避けたくなるような出来事が起きたのだ。
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2001年 8月14日
それは「ケーキバイキング」なるものが、まだ非常に珍しかった時代。
とあるホテルで開催されたバイキングに、私ははりきって出掛けていった。
(期間限定のイベントで、開催される度に通っていたのだ。)
ホテルメイドのケーキは本格派な感じで、
ケーキ好きの私の心をそそるものばかり、ズラリ並んでいる。
大きなお皿に、5、6個ものケーキを乗せて席につき、さっそく食べ始めた。
ひとつめ…チーズの味がする。
それもかなり本格的な香りで、輸入チーズを生地にたっぷり練り込んだ感じだ。
カビ独特の、ツンとくる刺激があった。
次、2つめ…あ、またチーズの味がする。
見ると、何層かになったケーキの下の段が、ブルーチーズをそのまま敷き詰めた層になっていた。
カビそのものの香りがし、脳天にキーンとくる感じがした。
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2001年 8月15日
さて3つめ…、これはムースだな……ア、アレ、これもレアチーズ?
んん〜、これもブルーチーズ系の香りだぞ……。
どうなってんの??
どのケーキも、見た目は全然違うタイプなのに。うーーん。
4つめ……う、うっそぉー! これって、どう考えてもブルーチーズケーキやん……。
ツーン、キーーン……。
カビ臭の刺激は、鼻頭の辺りに集中的にくる。
私はついに頭痛がしてきた。
もう、アカン……。
どうしたのだろう、今日はブルーチーズケーキ大会なのか?
本日のテーマがブルーチーズなのか??
シェフがブルーチーズを広める会の会長なのか?
それとも、よほどブルーチーズが余っていたのか、
賞味期限が切れかけていたのか???
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2001年 8月16日
チーズ好きで、チーズケーキもモチロン好きなはずだった。
しかし……ここまでやられると、ちょっとキツイ。
とくに、まだ本格的なカビ系チーズの強烈な香しさには順応していない時のこと。
まだまだ未熟モノの私には、この「これでもかー!」攻撃には屈するほかなかった。
そしてこの時からしばらく、ブルーチーズだけは避けてしまう日々が続いたのである。
……だが!
ついこのあいだから、私は変わった!
「これよコレ!!」というような、
クリーミーでまろやかで、コクの深いブルーチーズに出合えたのだ。
チーズアドバイザーの方の勧めで、少量ずつのチーズを盛り合わせたパックを買ってきた時、
その中にあったひとつである。
…………で、なんていう名前だったっけ、そのチーズ???
フランス産だったのは覚えてるんやけどなぁ。
(……アホだわ私……)
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2001年 8月19日
あ〜あ、こんなに覚えが悪いようじゃぁ、
どんなに足掻いても、私にはチーズアドバイザーは無理だわ。
あのまったりチーズ……ブルーチーズってこんなに美味しいかったのか!と、
私の持っていたイメージをすっかり覆してくれた、素晴らしいチーズ。
かなりの青カビが生地の中まで入り込んだ、見た目はキツそうな様相なのだが、
白い部分はトロ〜リと柔らかく、まるでクリームチーズのよう。
まろやかな食感で、乳製品らしい濃いコクがあって、ミルキーな優しい甘みもあって……。
んん〜何ていう名だったか……???
まーしょうがない、もう一度出合えることを祈ろう。
今度はちゃんとメモしようっと。
そんなわけで、今日はまた違うブルーチーズを買ってきた。
忘れないうちに、名前を書いておくとしよう。
今日のは、フランス産の「MarBleu(マルブルー)」というブルーチーズ。
これがまた、ウマイじゃぁないのっ!!
真っ白なチーズで、青カビがキレイに2層になっているという、
一見チーズケーキみたいな感じだ。
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2001年 8月21日
こちらは、カッテージチーズのようにふわふわポロポロした感じの生地で、
口に入れた時はふんわりアッサリなんだけれども、
次第にまったり感が出てきて、最後にはすごく濃いコクが口に残るという、
すごく変化のあるチーズである。
これは150グラムで1100円という、ちょっとお高い目の代物。
しかし! 私のようなビンボー庶民に嬉しいチーズも、同時に見つけたのだ。
いつでも、どっこにでも売ってる、QB○のプロセスチーズで、
四角いブロックが4個つらなったヤツ、よ〜く見ますよね?
あのシリーズで、「カマンベール入り」ってのが、けっこうイケル。
その他のは、私はもうひとつ……だが、これだけはわりとまったり感があって、
ちょっと気に入ったゾ。
ちなみに、4個入りで99円にて購入しました。
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2001年 8月24日
ちょっと忙しかったので、なかなか更新できずごめんなさい!
さて、山羊のチーズがうまい。
「シェーブル」っちゅーらしい。
パリに行った時に食べたのだが、その味は今も強く頭に残っている。
噛むと山羊の乳が染み出てくるような感じがして、
けっこう酸味があり、後に甘みが残る。
ちょっとクセのある味なので、馴れが必要だろう。
さっき、「4個99円のチーズがけっこうイケル」と言ってたヤツが、
いきなり「山羊のチーズ」はなかろう、と思ったアナタ、
そりゃごもっとも!
しかし、チーズの美味しさというのはあまりに幅が広く、
「私はチーズが好き!」なんて発言自体、不自然なのかも知れない。
99円のマイルドなプロセスチーズ(値段の問題ではなく)と、
山羊の乳を味わうチーズ、
はたまた、カビの刺激を楽しむチーズ、
それぞれ「チーズ」という名ではあれど、
味わいとしては、かなりかけ離れているように思えるのだ。
ちなみに、8月の終わりに山羊さん達が花を食べるので、
9、10月に出回るチーズは花の蜜の甘みが含まれるんだそうな。
(人に聞いた話です。)
これからが、ちょうど食べ頃だそうなので、
もしまだこの味をご存じない方は、ぜひ今!
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2001年 8月25日
先日、ひさしぶりに山羊のチーズが食べたいと思い、
某百貨店でチーズアドバイザーさんに聞いてみた。
しかし、私はどちらかというと大人しいタイプ(ウソつけ!)なので、
「山羊チーズが食べたいんじゃー!」なんて言えず、
アドバイザーさんのご説明を「ハイ、ハイ、そうですか」と笑顔で聞いていた。
そのうち、自分で山羊のチーズを見つけ、あっ!これだと思って、
「これ、山羊のチーズですよね?」と聞くと、
「ええそうです。それはクセがあるのでね」と軽く流されてしまったあげく、
「こっちはオレンジが混ぜ込んであって、甘くておいしいですよ」だの、
「これならあまりカビの臭いがしないから、とても食べやすいですよ」だの、
「これはパイン味」だの、
まるで「チーズ嫌いのアナタも大丈夫!」とでも言いたげなコメントばかり並べてくださる。
これだけ様々な輸入チーズを揃えておきながら、なぜ?
よほど私、チーズ嫌いそうな顔してたのかしら?
そんなわけで、なかなか山羊チーズを売ろうとしてくれないので、
「クセのあるチーズが食べたいんでーす」と告げると、
やっとそれなりの解説を始めてくれたのだった。
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2001年 8月28日
よくある。
これはクセがあるから、嫌いでしょ?とばかりに、
出来る限り一般的で平均的で、
奇をてらわない味のものを勧めてくれる。
実際、クセのあるものって受け入れない人は多いだろう。
だが、クセっていったい何だ?
「クセ」は「臭み」とも呼ばれる。
よく「臭みを抜く、消す」とか言うけれども、
何でもかんでも消してしまったら、
何でもかんでも同じような味になるのではないか。
すべて平均化されてしまう。
まるで、今の義務教育みたいなもんだ。
クセがないかわりに、旨みもない。魅力もない。
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2001年 8月29日
だいたい、臭みというのは、人間しか好まないものである。
本来、「クサイ」という感覚は、自分にとっての「危険」を示す信号であるから、
臭いものを摂取するのは自殺行為と言える。
腐っているから、毒だから、「これは食べてはイケナイ物だよ」というサインを、
「臭い」という感覚によって脳が認識するワケだ。
しかし人間は、長年の経験のうちに、
「この臭みには身の危険が含まれていない」ということを知り、
学習し、摂取可能になったのだ。
そのような貴重な学習成果を、ないがしろにするなんて勿体ない。
自分の脳にも、ぜひ学習させたいものだ。
臭みを旨味に変換するのは、脳の学習の成果である。
何でも臭い臭いと言わず、まずは学習を試みてみようではないか。
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2001年 8月30日
一度臭いと思ったものをもう一度食べないなら、その味は永遠に「臭い」のまま。
ワタクシ思うに、臭い臭いと連発する人というのは、
たぶん嫌いな食べ物も多いのではないだろうか。
なぜなら、臭いから2度と食べない、という人は、
「コレ嫌い」と一度感じたら2度と食べないというのが、その人の行動パターンのはず。
前にも書いたが、嫌いなものを何度も食べれば、そのうちきっと好きになる。
臭いものもしかり。
何度か食べれば、きっと「旨い」へと変換されるに違いない。
ろくでもない私なんぞに、誰も説教されたかなかろうが……。
もちろん、説教のつもりじゃぁなくて、
多くの人が、よりいっそう「食べる」ことを楽しめるようになったらいいなぁ、
……という私の願いだと思ってちょ。
あ、当然ながら、ホントに危険なものは食べないでね。
先日、ついにチーズの図鑑を買ってしまった。
ますますハマってゆくチーズの魅力。
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2001年 9月1日
食べ物の写真で、たまに妙なほど惹き付けられるものがある。
このチーズの本でも、出合ってしまった。
それというのは、「ヴァシュラン・デュ・オー=ドゥ/モン・ドール」というチーズなのだが、
惹かれたポイントは“大理石”だ。
このチーズ、カットすると中身がトロ〜リと流れ出てくるらしいのだが、
チーズ店では、それを大理石の四角い棒で止めるという。
ああ、この大理石をちょっとでも動かしたら、
あの柔らかでまろやかなチーズがトロリロリ〜ン……。
ハァ〜、想像するだけでヨダレが……。
だいたいにおいて料理写真というものは、
トロ〜ンとかジュワ〜ンいうシーンが表されていると、ほぼ例外なく魅力を感じるものだ。
「割るとチョコレートがトロリ」だとか、「肉汁がジュワ〜」だとか。
いったい何なのだろう、
この「トロ〜リ」に惹き付けられる人間の感性というものは……。
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2001年 9月3日
だいたい、こういう「本能的に惹き付けられる」というものは、
食欲or性欲に起因している。
チーズなんだから食欲……と思いがちだが、
この場合、チーズそのものより、「トロ〜リ」という状態に惹かれるわけだから、
性欲に訴えかけられている可能性が高い。
トロ〜リという形状は、どこかしらエロティックだ。
しかし具体的に、それがなんでエロティックなのかは、よくわからん。
まぁ、性欲と食欲の両者も密接に関わり合っているようなので、
これはこっち、なんて言えないのかも知れないけれど。
ほら、好きな人のことを「食べてしまいたいほど好き!」って言ったりしますよねぇ?
たいていは男性のセリフみたいだけど。
「食べてしもたら、なくなるやん!」って思うけど、
そういう本能を持ち合わせているのは確かなのだ。
その辺の詳しい心理については、専門家にお任せするとして、
とにかくチーズの「トロ〜リ」は、
「美味しそう」以外の思いをも含んだ複雑な感情を人間に起こさせる、
魅惑的で罪深い視覚的戦略なのだ。
なんのこっちゃ。
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2001年 9月7日
あ〜なんだかここ何日、物事に追われ追われて、寝るのもままならん日々……。
しかし、物事に追われすぎるのはイケマセンな。
誰だって忙しい時はあるし、どうしようもないものだが、
人間的な生活というものには、必ず「ゆとり」が必要だ。
仕方ない、ではダメだと思う。
だんだんカチコチに固まってきた脳ミソを、一度だらり〜んと柔らかく戻して、
楽しい、美しい、おいしい、ということをちゃんと感じられる脳にすること。
人生でいったい何が一番大事なのか、腰を据えて考える時間というものを、
最低でも1カ月に2回は作るべきだと、私は思います。
チーズについては、これからは何という名のものを食べたか、メモしていこうと思っている。
ビンボーなので、あんまり高級なのは買えないけど、
お手頃なものから少しずつ試していくことにしよう。
データを集められたら、ここでまた報告いたします。
みなさん、おすすめチーズがあれば、ぜひ教えてくださいね!
忙しい日々が一段落して、久しぶりにほっこりしたい時、
飲みたくなるのが抹茶だ。
「ほっ……。おうすでも飲もか」と思うと、急に気分が落ち着く。
というわけで、飲もうっと。
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