■■■めくるめく旅行情報誌ライターの夜明け■■■





●初めての取材は “かりんとう” の香り●




いよいよ初めての取材に出発だ。
5日分の宿泊セットと、仕事に使う大量の荷物をヨッコラセと肩に担いで、
私は緊張の面持ちで待ち合わせの駅に向かった。

駅につくと、
同じく新人ライターのS子さんが、やっぱり大きな荷物を担いで立っていた。
そこへ編集者Bさんが車で登場。

「おはよう〜。じゃ、福井県に向かいま〜す」

3人の女性を乗せた車は、高速道路をスイスイ走り抜けてゆく。
車内では、Bさんが取材のノウハウをいろいろと話してくださった。

「今のうちに、話せるだけの事を話しておくね」
なにやら怪しい前置き……。

ちょっとした取材のコツや、撮影の注意点、
いかに良い情報を集めるか、取材にかけられる費用はどの程度かなど、
基本的な事を並べた後、
Bさんはおもむろに話し始めた。

「でもねえ、実際はいろんなハプニングがあるんよね〜」
そう言って述べられた“ハプニングの例”の数々。まさに数々数々数々……。

「え〜そんな事あるんですか。
ええ? そんな事もあるんですか?
ええーっ! そ、そんな事もあるんですかぁーっ!?」

結局、福井県に到着するまでの間、
新人二人はただただ驚き続けた。
まだいくらでもありそうだったが、時間切れのためここで一旦お話しは終了。
「まあ、何とか切り抜けてね」
話の内容とはウラハラに、さわやかに笑うBさんであった。
強いお方だ……。

「さ、まず市役所に行きましょう」
新人二人はBさんの後ろに金魚の糞のごとく付き従い、市役所の観光課へ行く。
担当の方にご挨拶し、観光についていろいろとお聞きし、
打合せを行う。
やる事は大量にあった。

市役所を出て、Bさんは言った。
「福井県の全市町村役場に必ず行って、このような打合せをします」
全市町村というのがどんな数なのか、この時、私はあまりわかっていなかった。

「じゃあ、さっそく取材に行きましょ。一軒目はレストランにしようか。
まず、私が取材をするから見ていて」

そう言ってBさんは、さっそうと目的のレストランに入っていった。
「私これこれこういう者で、こういう取材をしたいのですが、これをお願いできますか」
取材するBさんの姿はキリリと格好良く、私はただ尊敬のまなざしを向けるばかり。

あっという間に撮影まで済ませ、店を出た。
その間、所要約30分。
「こんな感じね。わかった? 次どこ行く予定?」

じつは、この町は私が担当になっている地域で、
取材候補をリストアップしたのも私。
次はどこに行くか、私が決めなければならない。

「あ、じゃあ次は○○商店へ……」
「○○商店ね。そこ、アナタたちのどっちかが取材してみて。どっちがする?」
イキナリ来た……ど、ど、どうしよう。

「私、やります」
そう言ったのは、もう一人の新人ライターS子さんである。
----- うわぁ〜この人って度胸あるんだぁ……
圧倒されるばかりの自分が、どこまでも頼りなく思えた。

○○商店でのS子さんは、なかなかどうして、堂々として眩しいほどだ。
Bさんのアドバイスを受けながら、無事に取材をやってのけた。
こうなったら私も、圧倒されてばかりはいられない。

「次は湧月さん、取材してみて。どこに行く?」
私は物件リストと地図を見た。
○○商店から一番近いのは、とある和菓子屋さん。
「ここの和菓子屋さんを取材します」
ついに、私の初取材の時が来た。

手に汗を握りながら、和菓子屋さんの引き戸に手を掛けた。
じつはこの取材で何を言ったか、何をやったか、
緊張のあまり何も覚えていない。

ただ、帰り際にお店の人が何やら小さな袋を手にし、
私たちに一袋ずつ手渡してくれた場面だけが記憶に残っている。
「来てくれてありがとね。これ、おやつにつまんで」

小さな袋には、手作りの“かりんとう”が数本だけ入っていた。
「わあ……ありがとうございます!!」
お店の人のやさしい笑顔と、この温かいご厚意と、
そして初めて取材をこなした得も言われぬ喜びが、
私の身体を包み込んだ。

ほんわかした気分で店を出ると、
Bさんの口から信じがたい発言が飛びだした。
「じゃ、私はもう行くわ」

えっ? どこへお行きに? お手洗いですかい?
「私の担当の町、ここから遠いから、もう移動するね。
S子さんは隣町まで車で送るわね」
ええっ!!
もしや、アナタ様はもう旅立ってしまわれるんですかい!?

そんな私の驚愕などドコ吹く風、
Bさんはもう旅立ちの準備にお入りになっていらっしゃる。

「そろそろ日が暮れてきたねえ。今日は初めてだし、あと一軒ぐらいで終わっておいたらいいよ。
大荷物だから、今夜のホテルまで車で送ってあげる」

車の中でBさんは言った。
「今日、取材した資料は、ぜーったいに今日中に整理するほうがいいよ。
後でやろうなんて思っていたら、それはもう大変な事になるからね」
大変な事……どんな事だろう。

結局、ホテルまでの道中に取材予定の焼鳥屋さんがあったので、
Bさんは「食べ物屋さんの取材は撮影が特に難しいから」と言って、
ここだけ私の取材に付き添ってくださった。
そして、ビジネスホテル前で私だけが車から降りると、
「がんばってね〜!」と言い残して走り去った。

辺りはもうまっ暗だ。
ちょっと裏道に入った淋しい場所に建つビジネスホテルは、
今まで旅行で訪れていたようなワクワクする感覚など、
微塵も感じさせてくれはしなかった。

----- あ〜あ、一人だ……

トボトボとホテルに入り、チェックインする。
肩に担いだ荷物が、心なしか重くなっているようだ。
築・数十年といった風情ただよう薄暗いホテルの一室に入ると、
ドテッとベッドに身をなげた。


……おなか、減ったなぁ……。

さっきの焼き鳥屋さんが言っていた。
「後でウチの焼き鳥、食べに来たらええよ! おいしいよ〜。待ってるよアンタ!」
ああ、撮影させてもらった焼き鳥のおいしそうだったこと……。
炭火で焼かれた香ばしさ、自慢のタレの照り、地鶏の刺身もあったなぁ。
食べてみたかったなぁ……食べに行こうかなぁ。

しかし、Bさんは私にこう言い残したのである。
「う〜ん、このホテルだったら、夜は出歩かないほうがいいわ。
人通りも少ないし、道も暗いし。
とにかく、身の安全だけはしっかり自分で守ってよ。
自分の身の安全だけはちゃんと心掛けてね!」

やっぱり、ホテルを出ることはできない。
ここで自分に何かあったら大変だ。
なにしろ、これは仕事なんだから。私の責任でやらねばならない仕事なんだから。

結局、焼鳥屋さんも、外食も断念した。
近くにコンビニのひとつもなかった。
ホテル内にレストランも売店もなかった。

----- 何か食べたいよぉ……

お腹がグゥと鳴っている。
私はカバンをまさぐってみた。
カサカサ…。
さきほどもらった小さな袋だ。
封を開けると、懐かしい黒糖の香りがフワッと立ちのぼった。

何年ぶりだろう、“かりんとう”を口にするのは。
懐かしい味をポリポリとかじりながら、
私のこれからを考えた。
夢が現実になろうとしている。いや、これから私が現実にしていくのだ。

かりんとうの小袋はすぐカラッポになり、私の夕食は終了した。
虚しさなのか充実感なのか、
何だかわからないものを胸いっぱいに抱えながら、
とにかく教えられた「今日の資料をすべて整理する」という作業を、
深夜まで無心にこなした。

2004.3.5


 ●そして試練は始まった●


疲れたけれど眠れない。
初めての仕事に緊張の連続で、そのうえ歩き回って、
ろくな昼食も食べてないのに、
夕食はかりんとう数本のみ。
お腹なんか減りすぎて、もうグゥともいわない。

明日は何から始めればいいのだろう。
うまく取材できるのだろうか。写真は失敗しないだろうか。
不安ばかりが襲いくる。

・・・・・・
ことわっておくが、
この頃はまだ、デジカメなんて言葉さえなかった。
すべてポジフィルムを使って、一眼レフカメラで撮影を行う。
帰って現像するまで、撮れたかどうかさえ不明だ。

さらに、携帯電話もなかった。
取材中にわからない事が発生したら、いちいち公衆電話に走っていくしかない。
自分に電話連絡してもらう事さえ出来なかった、そんな時代だ。
(古い人間やなぁ〜私)
・・・・・・


ビジネスホテルに一人で宿泊することなど、めったになかった。
何度かあったとしても、東京ぐらいのもの。
こんなに淋しいところで一人、硬いベッドに身を任せても、
ぐっすり眠れるハズもない。

あんまり静かで気持ち悪くて、小さな音でテレビをつけてみるけれど、
青やら赤やらの光が閉じたまぶたを通り抜けて、
よけいに睡眠を邪魔するばかり。

ハァ。

何度ため息をついただろう……気がつくと外が明るかった。
「朝だ。朝が来た」
さあ! いよいよ始まるのだ。

昨日、教わったことをよーく思い出して、取材の荷物をととのえる。
どこから、どうやって回ろうか。

--- 1日、13物件ほどの取材を目標にね。
Bさんはそう言っていた。

さてさて、ちょっと解説しよう。
じつはここは、
同業者なら“耳を疑う”または“爆笑ポイント”なのである。

じゆ〜うさんっですってかいっ!???
……こんな感じ。

普通、雑誌におけるお店の取材というものは、
だいたい一軒の店に1時間半〜2時間ぐらいみておくのが一般的。
そこに、移動時間などを考慮すると、
どんなにがんばっても一日5軒でイッパイイッパイ。
よっぽど急いでがんばったって、7軒も取材したらヘトヘトになる。

しかも、だ。
上記の「普通の取材」というものは、
あらかじめ店へ連絡をとっておき、
取材の申し込みをして、撮影のための商品や料理を用意してもらい、
ライターとカメラマン、そして時には編集担当者も一緒になって、
1チームで取材に向かう。

もちろん、取材スケジュールというものが予めしっかり組まれている。
取材の当日は、その予定に沿って行動するわけだ。


だが……違う。
たったひとりでカメラと筆記用具を持ち、
何のスケジュールもなしに、
まったく知らない町を歩いて情報を集めながら、
ほぼすべて飛び込み状態で取材をする。
それを、13物件。


『るるぶ』という雑誌はなかなかよく出来た本で、
福井県の情報誌を作るとなれば、
福井県全土をくまなく取材してまわるのがポリシーなのである。
どんな山奥の過疎地であろうが、
観光物件なんかない! 観光客なんか来るかバカ! と町の人に叱られようが、
とにかく絶対に取材するのである。

それも、紹介物件が多いからといって、
ある程度は電話や資料で済まそう……なんて事はしない。
必ず足で行って、新鮮なナマ情報を集めるのが信念なのだ。
こういう姿勢は、とても素晴らしいと私は思う。

読者にとっては、の話だが。

これが取材者をどれほど過酷な状況に追いやるのか、
私はまだわからなかった。

さて、どうやってまわるか。
小規模な社寺や、公園、池など、さほど変化する情報のない物件は、
写真撮影をして資料を集めるだけで終われるのだが、
それを除いても10軒近くはまわらねばならない。

躊躇しているヒマはない。
お店の営業時間は限られている。
私の動ける時間も限られている。
そんな中で、自分の担当分を“絶対に漏らすことなく”取材しなければ帰れない。

取材日の延長など、嵐でも来ない限り絶対に認めてもらえない。
だからといって、少しでも取材漏れして帰ってしまったら、
もう一度、福井県まで行ってきまーすなんてことも当然ながら許されない。
与えられた時間で自分の仕事をこなせなければ、
本が発行できなくなる。

自分のせいで本が発行できなかったら……即、土下座のうえライター廃業。
もしかしたら賠償問題!?
そんなのヤダァーーーーーーーー!!!

(べつに誰からも土下座せぃって言われた事は一度もありませんが、
プロってそういうもんですよね)

さ、戸惑ってはおられませぬ。
とにかく事を前に進めるのみ!

しかし……じつは私、すごい人見知りの激しい人間で、
友達と話すのさえドキドキするほどで、
初対面の人なんかドモッちゃったりなんかして、
もう大変なのである。

もしかしたら、最高に“自分に不向きな職業”を選んだのではなかろうか?

そんな気弱な思いを振り払うように、
とある店の戸を開けた。
無我夢中で取材した。
店を出た時には、グッショリと背中に脂汗をかいていた。


ひとつ、うまくいけば、あとは前進のみである。
とにかく歩き、とにかく人に聞き、
とにかく必死でやれるだけのことをやってみた。

笑顔で迎え入れてくれたはいいけれど、一時間ものお喋りで帰してもらえないところもあった。
押し売り業者と間違えられ、見たことないような怖い顔で追い返されたりもした。
「アンタが写真、撮るのか?」と、料理人さんに舌打ちされたりもした。
地図が間違っていてたどり着けずに、そこらじゅう彷徨ったりもした。
そのまま日が暮れて、焦って泣きそうになったりもしたが、
誰も助けてはくれない。

結局、まっ暗になってもまだ町を彷徨い歩き、
足を引きずりながら、遅くまでやっている店を訪ねまわり、
なんとか満足いく情報を集めて、ホッとしながらホテルに帰った。

部屋に入って、まずは義務づけられている会社への電話。
「どうでした〜? 今日、うまくいった?」
編集者Aさんの声がなんだか故郷のお姉さんみたいに懐かしくて、
やっと私の本当の声が出せた。

「なんとか、がんばりました。
いろいろ苦労しましたけど、予定分の取材はできました!」
「そう、良かった! ほんとにお疲れさまでしたぁ。
じゃあ明日もがんばってネ」
「ハイッ!」

疲れ切っていた気持ちがまたムクムクと起きあがり、
ヤル気に充ち満ちてきた。
さてと、今日の資料整理と、明日の準備に取りかかろう。
明日は隣の町へ移動して、まずは町役場に挨拶だ。
電車の時間も確認せねば。

そうそう、その前に夕食。
今日は大丈夫、おにぎりを買ってある。缶のお茶も。

おにぎりを食べた後、取材でいただいたお饅頭をひとつ食べ、
また深夜まで作業をした。
この夜はさすがに、ぐっすりと寝た。

2004.3.9



  ●うまいモンは食べ歩くんじゃない。撮り歩くのだ●


旅行雑誌のレポーターって、オイシイ仕事やねえ。
タダで旅行に行けて、うまいモン一杯食べて回って、感想とか書いたらお金もらえるなんて。

……まぁ〜それはそれはよく言われたものだ。
正直、私自身もそういうイメージを抱いていた。

確かにタダで取材先まで行ける。出張だから。
書いてお金をもらう仕事である。
この2つはほぼ正解だ。

ただし、到底「旅行」とは呼べない。
遠くへ行けば旅行ってワケじゃない。
うまいモンはそうそう食べられない。こういう情報誌の場合は。

初めての取材のたった2日だけを考えても、もうおわかりだろう。
1日目の夜……かりんとう数本とビジネスホテルに置いてあったお茶パックでお茶を飲む。
2日目の夜……おにぎりと缶のお茶。
それも、食事はすべて自腹。

これが現実だ。

余談だが、“グルメライター”の仕事だと、かなり違ってくる。
味についての記事を書こうと思ったら、食べずに書くのは“ウソ”になるから、
ほんとに食べ歩きをして回る。
実際、後にレギュラーで書いていたグルメ誌の取材では、
おいしい料理を食べて食べて食べた。
これを“月”というなら、今回の取材は“すっぽん”。

(“月”といえども、これはこれで厳しい世界なのだが、それはまた後に。)

何と言っても1日13物件を取材して回る情報誌のライターなのだ、
食ってる暇なんかあるかってんだい。

本に載っている豪華な料理の写真、
あれらの料理、めったに食べておりません。キッパリ。

(これは、“情報誌一般”の話ではありませんので誤解なきよう。
非常に個人的なドキュメントです。
ちなみに私の場合、
食べてない料理を「おいしい」とは絶対に書きません。
情報誌にウソを書くのは、私としては許せないんですよね〜)


一人で取材と写真撮影をこなすというのは、想像以上に困難である。
旅行情報誌というのは、扱う物件のジャンルが幅広い。というか、何でもアリである。
写真だけを考えても、
寺や店などの建物撮影、公園などの風景撮影、美術館などのガラス陳列棚の中のブツ撮影、
店の商品撮影、人物撮影、料理撮影、風呂場撮影、鉄道撮影などなど、
すべてに専門家が存在するほどのジャンルを一人で全部撮るわけだ。
こんなもん、簡単にできるかってんだい。

中でも難しいのが料理撮影。
ニコンの重ーーーい一眼レフカメラに、これまた重ーーーい別付けのストロボをガシャッとはめて、
イスにのぼったりしてポジフィルムで撮影するのだが、これは相当な技術がいる。
料理の前に立って、ストロボをバシャッとたいて撮ったら、
とんでもないマズそうな写真になってしまう。

シャッターは、予算の都合で2〜3回ぐらいしか切ってはいけないと決められている。
(普通は10枚、20枚という単位でシャッターを切るものだが……)
しかも、もちろん失敗は許されない。

撮影の最中に料理の説明をされた日にゃぁ大変だ。
すべて頭の中に叩きこんでおかねばならない。
カメラのことでイッパイイッパイだというのに。
しかし、話は後で…なんて言う時間的余裕もない。
それ以前に、インタビューというものはタイミングを逃したら二度といい話が聞けなくなる。

料理を並べてカメラを向けながら、目の前の美味しそうなモノの話をたっぷり聞いて記憶し、
冷や汗をかきつつシャッターを切ったら、
聞き漏らした項目を質問してメモして、そそくさと失礼する。
それを、時間のゆるす限り繰り返す。

たとえ取材中にお腹がグウゥーと鳴ろうとも、
たとえ飲まず食わずで8時間ぐらい町中をさまよい続けていようとも、
たとえ焼き上がったステーキの香ばしい匂いと音に目眩を覚えようとも、
写真を撮ったらもうそこにはいられない。
我は次へ行かねばならぬのだ。

ああ、切ないほどのこのひもじさよ。
またもやヘロヘロになって、ビジネスホテルに向かったのは夜の8時半。
何か食べたい……。

ホテルへの道すがら、
そんな私を迎えてくれた、唯一の店があった。
唯一というのは、この時間にまだ営業しいる店がそこ一軒だったということである。
『るるぶ』の取材は、ビックリするような“カントリーな地域”まで及ぶので、
事情のわからない我々よそ者は、自分の食料を入手するのも大変なのだ。

助かったとばかりに、明かりに誘われてその店へ行くと、
全国チェーンの小さな洋菓子店だった。
商品はほとんどなくなっていた。
残されていたのは、シュークリームとエクレア。

その夜、疲れた身体をベッドに投げ出して、
ビジネスホテルの暗いオレンジの電気の下で、ひとりエクレアを頬張りながらつぶやいた。
「ああ塩味が恋しい……」

2004.3.23




つづく。







文/湧月りろ


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